私たちは病院内で有名だと言われました。
ある日、病院の帰りにバスを待っていました。
看護師さんと二人だけでした。
「毎日大変ね。毎日来ているでしょう。」
「まだ若いわよね。とにかく若過ぎる…。」
「もっと早く気が付いていればね…。」
「脳に転移していなければいいけど…。」
「みんなで話してるの。奥さんこれから一人でどうするのかしらって…。」
他の方が近付いて来たので、そこで話は終わりました。
離れる時に、「一人で悩まないでいつでも相談して欲しい。」と言われました。
内科の医師に怒られた事を思い出しました。
内科に入院した初日の出来事です。
「若い、若い!若過ぎる!」
「毎日見ていてわからなかったの!」
「転移は当然していると思う。」
「脳に転移の場合は手術が出来ない。」
病理検査の結果が出ました。
想定外の結果でした。
「転移はありません。」
「リンパにもありません。」
(えっ…???)
二人とも声が出ません。
絶対、転移はしていると思っていました。
内科であと1年と言われた程です。
「通常転移をしているケースだが、この様なケースが無いわけではない」との事でした。
淡々と今後の話に移りました。
検査のための通院の話です。
「しばらく1か月に1回」
「その後、3か月に1回」
「その後、6か月に1回」
「その後、1年に1回」
(5年続きましたが、毎回「綺麗な数値」「しかも正常値の中心の数値」「健康だと思って検診を受けない人よりもよっぽど綺麗」などと、言われました。)
2人の人を思い出しました。
(あっ…)
(転移がなかった事を話さなくちゃ…)
(「バスを待っていた看護師さん」と、「家族の様に怒ってくれた内科の先生」に…)
まず、ナースステーションに行きました。
転移がない事を報告しました。
皆さんは声が出ず信じられない様でした。
目を丸くして黙ったままです。
同じ姿勢で固まっています。
誰も何も話さないので、「ありがとうございました!」と挨拶して戻りました。
次に、家族の様に怒ってくれた内科の医師を探しました。
コンビニから戻るところを見つけました。
転移がない事を報告しました。
「えっ!」
と一言だけ発し、その場で止まってしまいました。
よほど驚いた様で、持っていたコンビニの袋が落ちた程です。
そのまま動かず一点を見つめているため、「ありがとうございました!」と挨拶して戻りました。
医療の世界での常識は難しくてわかりません。
ただ、皆さんの驚き方から珍しい結果だったのだと感じています。
そして、「亡くなった義母」が一生懸命「夫の体の中を掃除」してくれていたのだと思っています。