【看病:50代①】⑫アポなしで病院へ「断る事をしなかった職員の皆様」

あの日は、無我夢中でした。

今振り返ると、「恥ずかしさ」でいっぱいになります。

 

朝受付が始まる頃、病院に到着しました。

キャリーバッグを引きずりながら、「初診」の受付に向かいました。

 

どの様な順番で話したのかは覚えていません。

とにかく必死でした。

「夫が転勤先でがんになった。」

「約15年前にこの病院で手術をした。」

「同じ先生に主治医になって頂きたい。」

「どうしても先生に会ってお願いしたい。」

1-⑥外科入院「勇気づけられた主治医の言葉」
『内科での検査が終わると、すぐに外科病棟に移されました。…』

 

「アポ」、「保険証」、「診察券」、「本人はいるか」などを聞かれました。

全て「NO」です。

 

何度も頭を下げてお願いしました。

「先生でないと夫は死んでしまいます。」

「1分でもいいので会わせて下さい。」

「実際にお会いして断られたら諦めます。」

「そうでなければ夫に会えません。」

 

受付は長いカウンターで、20人位います。

全員立ち上がり、黙ってしまいました。

各々困った顔をしています。

下を向いたり、腕を組んだり。

 

(皆さんを困らせている…)

(でも…絶対先生に会いたい…)

 

 

すると、奥から一人の女性が声を掛けて下さいました。

「先生は、今日はオペです。」

「◯◯先生(現院長、30代手術時の外科医長)でもいいのですね。」

「私から秘書に頼んでみましょう。」

1-⑫手術直後「家族の様に喜んで下さる外科医長(現院長)」
『手術が始まりました。…』

 

座って待っていました。

しばらくして呼ばれました。

「先生が、お会いしますとのことです。」

 

その瞬間、受付の皆さんの緊張がほぐれた様でした。

私よりも、皆さんの方がホッとしている様に見えました。

 

秘書が迎えに来て下さいました。

小走りで駆け寄ってきました。

「話は伺いました。」

「奥さん、もう大丈夫ですよ。」

 

外科の診察室の前に通されました。

看護師さんが走って来ました。

「フライトの時間は大丈夫ですか?」

「ここを何時に出れば間に合いますか?」

 

 

思い掛けない気遣いに驚きました。

秘書も看護師の方も優しい笑顔でした。

(えっ?…)

 

 

この日の事は、詳細に覚えています。

なぜならば、「誰一人として断る事をしなかった」からです。

 

私も医療機関の受付で働いた事があります。

しかし、同じ対応が出来るかと聞かれたら自信がありません。

恐らく、

「ご本人にいらして頂かないと…」

「保険証がないと…」

「アポがないと…」

などとお断りの方向で話をしていたと思います。

 

 

しかし、この病院の方々は「誰一人として断る事をしません」でした。

受付、秘書、看護師の皆さん…。

総務と思われる方々…。

事務室から出て来られた男性方…。

 

今までの人生の中で、我を忘れて必死でお願いをした経験はこの日だけだと思います。

外科の上司(現院長、30代手術時の外科医長)にお願いするチャンスを与えて下さった皆様に、改めて心より感謝申し上げます。