【看病:50代②】③一度だけの外出許可「幸せな時間」

いつもの様に面会に行くと、先生と看護師さんが慌てていました。

夫が「外出先から戻って来ない。」と言われました。

 

しかし、病室に行くと夫はベッドに座っていました。

戻ったばかりの様でした。

 

先生と看護師さんが、勢いよく入って来ました。

「あっ…、戻られたのですね。」

「良かった…。」

 

入院から1か月位経っていました。

この日、運転免許の更新で2時間の外出許可をもらいました。

 

久し振りに外の空気に触れ、とても幸せだったと言います。

嬉しくて、帰りは真っ直ぐ病院に戻らずに「コンビニ」「ファーストフード」「スーパー」等に寄ったそうです。

 

そのため、2時間の約束を大幅に超えてしまいました。

なかなか戻って来ないため、途中で倒れているのではないかと先生方が慌てていたところに、私が到着しました。

 

夫は、とても幸せそうです。

嬉しそうに微笑んでいます。

 

穏やかな口調で話していました。

「健康な人には、この気持ちはわからない。」

 

 

入院してしばらく経った頃の話です。

ある日の帰りの事です。

いつもの様に、手を振ってタクシー乗り場に行こうとしました。

夫の声が後ろからします。

 

出入り口の自動ドアの前で、外との境界線を指差していました。

「ここから向こうには行けない。」

 

言葉を失いました。

気が付きませんでした。

どんな気持ちで、毎晩その場所に立っていたか…。

この日から、毎晩帰りに境界線を越える時、「心の中で早い退院日を祈る」様になりました。

 

 

あれから数週間後の外出許可。

どんなに嬉しかった事でしょう。

境界線を越える時は、どの様な気持ちだったのでしょう。

 

確かに夫が言う様に、

「健康な人には、この気持ちはわからない。」

のだと思います。

 

でも、

「夫が幸せだと私も幸せ」

という事には、もしかしたら夫は気が付いていないかもしれません。