【看病:50代②】⑥入院中の不思議な体験「最期の挨拶」

人は死ぬ時、「お世話になった方に、ご挨拶にまわる」と聞いた事があります。

「御礼」と「自分の事を忘れないで」という気持ちからだそうです。

 

入院病棟のラウンジには、碁石・将棋・オセロ等のセットがありました。

夕食の時間まで二人で遊んでいました。

 

その光景を、隣のテーブルからいつも見ている患者さんがいました。

60代だと思われる男性です。

優しく微笑んでいました。

 

ある日、いつもの様に面会に行くと、夫はその男性と楽しそうに囲碁をしていました。

 

その日から、病院に行くと毎日二人で囲碁をしています。

「今日は何勝何敗だった。」など、二人で笑いながら報告をしてくれました。

 

その男性は、「入院した日の事」や、「ご家族について」などいろいろな話をしてくれました。

夫と私が遊んでいる時は、アドバイスをしてくれました。

 

しかし、退院予定日の話になると、黙って静かに微笑むだけでした。

 

 

数日が経過したある日のこと、男性が亡くなったと聞かされました。

いつもの様に面会に行くと、夫は扉を閉めて話し始めました。

 

夫の部屋は、ナースステーションの目の前です。

男性の部屋は、そこから離れた場所です。

 

夫の話では、前夜「夫の隣の部屋」にその男性がいたそうです。

「隣の部屋」のドアが開いていて、廊下に面した洗面台の前に立って手を洗っている様だったと言います。

 

「今度お隣に移られたのですか?」

とお聞きしたら、返事はなく静かに微笑んでお辞儀をされたという事です。

 

その翌朝、男性は亡くなられました。

しかし、亡くなられた場所は「隣の部屋」ではなく、「元々いた離れた部屋」です。

 

看護師さんの話でも、一度も隣の部屋には移っていないという事でした。

不思議な話です。

 

 

私も同じ様な体験をした事があります。

30年ほど前の話です。

その日は妹が泊まりにきていました。

夜遅くまで、二人でお喋りをしていました。

 

妹の後ろには、廊下への扉があります。

少し開いていました。

その廊下を、スッと「背の高い、痩せた、メガネをかけた、ジーパン姿」の男性が通るのが見えました。

 

(夫が起きてきたのかしら?)

 

廊下を見ましたが誰もいません。

夫は2階で寝ています。

 

翌朝、夫にその話をしました。

「一人だけその容姿の人がいる。」

「新人時代にお世話になった先輩。」

「会社の健診で3年続けて胃が要精密検査だけど、病院嫌いで行かない先輩。」

「何度も、病院に行った方がいいですよと言っているのだけど…。」

 

その直後、電話が鳴りました。

その先輩が、明け方亡くなられたという知らせでした。

 

夫が寝ていたため、「会いに来た事を伝えて欲しい。」という想いが、私に伝わったのでしょうか。

不思議と全く怖くありませんでした。