【看病:50代②】⑧突然の退職「在職中に教わった大切な事」

3度目の退院日(土)と翌日(日)、会社を退職するか一人でずっと考えていました。

そして、(月)朝一に「翌月末退職希望」を上司に報告する事にしました。

 

当時、銀行の健康保険組合で事務長をしていました。

月曜日の朝になりました。

出社早々、常務理事に声を掛けました。

「お話ししたい事があるのですが…。」

 

しかし、同時に常務理事の電話が鳴りました。

「ちょっと待って下さいね。」

 

まずは上司からという順番はわかっていたのですが、テンションが上がっていたのか誰かに話さなくては落ち着きませんでした。

 

職員の皆さんに声を掛けました。

「集まって頂けますか?」

 

作業を中断してくれて、筆記用具を手にパタパタと会議室に集まってくれました。

「はいっ!」

 

私の言葉をもらさずメモをしなくては…という真剣な目で見てくれています。

その真剣な目を見たら胸が詰まり、出てきた言葉は「単語」でした。

 

「ごめん…。」

「辞める…。」

 

皆さんの目が大きく見開き、動きが止まりました。

初めて経験する長い静止でした。

その後、皆さんは職場の席には戻らずにラウンジに行ってしまいました。

 

間もなく、常務理事の電話が終わりました。

「翌月末退職希望」の話をしました。

突然でしたので、非常に慌てた様子でした。

 

「退職の事、誰かに喋った?」

「まだ誰にも言わない様に。」

「喋りそうだから会議室から出て来ないで。」

 

そう言い残して、理事長(兼人事部長)の部屋に走って入って行きました。

 

退職理由ですが、ちょうど昔の上司に声を掛けて頂いていたので、「再就職予定」と言いました。

 

理事長や常務理事から有り難い言葉を頂きましたが、「本当の退職理由」は夫の件でしたので、気持ちがぶれる事はありませんでした。

 

引き継ぎする際、目を赤くする人や涙を溜める人など、見ている私も苦しかったです。

 

しかし、声を掛けた際は「はいっ!よろしくお願いします!」と元気に挨拶をして下さいました。

私への気遣いに頭が下がりました。

恐らく、詳細まではわからなくても「夫の関係で退職をする」という事に、気が付いていたのかもしれません。

 

 

職員の皆さんには、在職中に驚かされた事があります。

その日は、退社時間になっても全員席に座っていました。

 

全員の業務を把握しているつもりでした。

(残業はないはず…)

聞いてもニコニコするだけです。

常務理事も笑っています。

「僕が残っていますので、どうぞお帰り下さい。」

 

翌朝、驚きました。

いつもの様に、書類を出すためキャビネットを動かしました。

「書類の位置」が変わっていました。

 

私の書類が、「出し入れし易い位置」に移動されていました。

当時、私は交通事故で腕が不自由でした。

それを気にしてくれていたのでしょう。

 

驚いて皆さんの席を見ましたら、ニコニコニコニコしています。

常務理事が笑いながら歩いて来ました。

「すみません、何も言わずに。」

「昨日、皆から残業の申し出がありました。」

「理由は聞いていましたが、黙っていて欲しいと言われていたので…。」

 

皆さんに御礼を言いましたが、ここでも驚きました。

返ってきた言葉ですが、「いいえ、どういたしまして。」などではありませんでした。

 

「いつもありがとうございます。」

頭を下げられました。

ニコニコしながら少し照れている様にも見えました。

 

(えっ…?)

 

他人のために、残業までして書類の位置を変えてくれました。

法律関係の本が多いため、重たかったと思います。

 

「いいえ、どういたしまして。」

「いいえ、何かあったら言って下さいね。」

など、自分たちへの御礼に対する返事でもいいはずです。

 

この職場では、大切な事を沢山教えて頂きました。

「元々の性格」なのか、「上品な常務理事を見本」にしているのか、「この会社の色」なのかはわかりませんが、大変勉強になりました。

他人から教わる際は、年齢ではないと言いますが本当ですね。