私たちの宝物の1つに、この入院時に頂いた「病棟実習生の方からの贈り物」があります。
看護専門学校の学生で、病棟の実習に来ていました。
ある日、夫の病室に人が集まっていました。
看護師さんと看護専門学校の方々でした。
担当教員が、夫に実習の協力願いをしていました。
男女の学生さんたちが緊張していました。
この病院は、「学生の病棟実習先」に指定されているという事でした。
夫には、女子学生さん1名が担当してくれる事になりました。
看護師さんの言葉を、もらさない様に真剣に聞いていました。
ぴったりくっついて歩いていました。
ある時、エレベーターホールで学生さんたちが集まっていました。
なにやら担当教員に相談をしている様子。
しばらくして、私一人で廊下を歩いていると担当教員に呼び止められました。
夫の担当に、実習生を増やしてもいいですかと聞かれました。
他の患者さんから断られ困っているとの事。
ほとんどが初めての入院、手術の患者さん。
不安で自分の事だけで精一杯。
実習生を受け入れる心の余裕がない。
ご家族も反対。
そして、病院に相談したそうです。
その結果、夫なら快諾してくれるのではないかという結論になったと言われました。
担当教員が力説していました。
「この病院はレベルが高いため、ここで実習をさせたい。」
「実習指導者の研修を修了している、ベテラン看護師さんが多い。」
医療業界の難しい話はわかりませんが、ただ見ていて感じた事があります。
1つは、看護師さんの心の余裕です。
大変忙しい中にもかかわらず、笑顔で話をしているのが印象的でした。
担当看護師さんは毎日変わりますが、実習生の方に対して皆さん慣れていらっしゃる様でした。
実習指導体制が確立されているのでしょう。
もう1つは、相手の目を見て話をしている。
大事なところはゆっくりと、繰り返し説明をしていました。
一方的に話をするのではなく、実習生が理解しているかどうかを確認しながら話をしている様に見えました。
夫も気が紛れたのではないかと思います。
ある日、男子学生が夫の髪を洗ってくれていました。
しかし、顔に水がはねています。
担当教員が慌てていました。
女子学生に代わる様に指示しました。
しかし、やはり慣れていなくて水が飛び…。
夫は顔をふきながら大笑いをしていました。
亡くなった義母は、美容院を経営していました。
そのため、夫は洗髪に詳しい方です。
夫は自分からもう一度練習台になると言い、二人に教えてあげていました。
担当教員も、「私も聞きたい!」と真剣に聞いていました。
最終日、女子学生の方が「手作りの看護ノート」をプレゼントしてくれました。
可愛いシールなどで飾られ、食事や生活上注意する事が書かれていました。
表紙には、「生活の中で気をつけること」、
裏表紙には、「今まで通り定期的に検査、受けて下さい」。「日付」「名前」「学校名」も。
お昼頃、担当教員と一緒に御礼にいらっしゃいました。
夫は寝ていました。
恥ずかしそうに、ノートを両手で差し出しました。
「あの…これ、旦那さんに渡しておいて頂けますか…。」
しかし、夕方頃急ぎ足でパタパタと部屋に戻って来ました。
もう帰るという事でした。
「やっぱり自分で渡します!」
寝ている夫を起こし、今日が最終日だと話しました。
突然の、心のこもった贈り物に夫は嬉しそうでした。
いつかどこかで、私かもしれませんがお世話になる日が来るかもしれません。
その時は、きっと大きく成長した看護師さんになっているのだと思います。
今でも時々開いて見ています。
退院し、日常に戻ると大切な事を忘れがちです。
まず、表紙に書かれている「生活の中で気をつけること」の文字を眺め、そして大事にゆっくりと開いて読み返しています。
ありがとうございました。