【看病:50代④】⑧同室の方から「じっと見られていた理由」

夫の斜め前のベッドに、同年代と思われる50代前半位の男性患者さんが入院してきました。

その男性が、私の事をじっと見ている事に気が付きました。

 

 

その男性のベッドは、いつもカーテンが閉まっているため、顔はわかりません。

お見舞いに来る奥様との小さな話し声だけが聞こえていました。

 

ある日、夫と入院病棟のラウンジでお茶を飲んでいました。

横から視線を感じます。

その男性がじっと見ています。

見ているというより、睨んでいるかの様でした。

 

その時は誰かわかりませんでした。

部屋に戻る時、後ろからついてきました。

同じ部屋でした。

斜め前のベッドの方でした。

 

(私の事を見ていた…)

(というか、睨んでいた…)

(絶対、睨んでいた…)

 

その日から気になり始めました。

私たちがラウンジに行くと、必ずと言っていいほど後ろからついてきます。

そして、やはりじっと私を見ています。

夫ではなく、確実に私です。

 

(やっぱり、見られている…)

(毎日来ているから…?)

(私がいると落ち着かないのかしら…)

 

 

そして、理由がわかりました。

その日は、その男性の奥様もいました。

 

コンビニに用事があり、私一人で部屋を出ました。

後ろから奥様が走って来て、声を掛けられました。

「ちょっといいですか?」

 

奥様は涙目で話し始めました。

「旦那さん、何度も入院や手術をされているんですね。」

「それなのに、奥さんはいつも笑顔です。」

「夫が不思議がっているんです。」

「なんで、あの奥さんは笑っていられるんだろうって。」

「心配じゃないんですか?」

 

私も言われて気が付きました。

確かに、心配という気持ちはありませんでした。

仕事を休まなければならないので、「可哀想…」とは思っています。

しかし、入院・手術について心配という気持ちを持った事は一度もありません。

 

言われて初めて気付いたので、一瞬戸惑いました。

でも、勝手に口が動いていました。

「初めての手術は30代でしたが…。」

「ずっとこの病院なんです。」

「ここにいると安心なんです。」

「不安に思った事は全くありません。」

「夫もそう言っています。」

 

 

その日から、そのご夫妻の閉まっていたカーテンが開く様になりました。

今まではヒソヒソ話でしたが、奥様の笑い声も聞こえる様になりました。

 

抗がん剤の薬が効いてきたある日のこと。

夫はかなり辛そうでした。

「気持ち悪い…。」

「船に酔った様…。」

 

その様子を見ていたご夫妻が声を掛けて下さいました。

「大丈夫ですか?」

「うちは明日から始まるんです。」

「頑張って下さい!」

「自分の時も頑張りますので!」

 

逆に励まされました…。

ご主人様は笑顔でした。

 

夫は笑っていました。

やはり4人部屋にして良かったです。