【看病:50代⑥】⑧看護師さんの言葉「あとで後悔をしないように」

この日は、「ぎりぎりの所で切除して、少しでも多く残すため」の内視鏡検査日でした。

 

夫は、主治医に「手術はしない」事を伝える予定でした。

しかし、主治医の行動を見ていたら言えませんでした。

「自分のために、少しでも残そうとしてくれていた…。」

「印をつける場所を、真剣に考えてくれていた…。」

 

私は、手術をして欲しいと思っていました。

削った部分に、がんがあるのですから。

(良かった…)

(まだ、手術をしないとは言っていない…)

 

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1Fのロビーに、いつも話しかけて下さる看護師さんがいました。

昔からこの病院に勤務している、ベテランの優しい看護師さんです。

 

エスカレーターで降りる時、看護師さんが見えたので駆け寄りました。

夫に直接言えない事を、看護師さんに訴えました。

「また、手術になりました!」

「夫が手術はしたくないって言うんです!」

「でも、私は先生の言う通りに、手術をするべきだと思うんです!」

 

看護師さんは目を丸くして驚いていました。

「えっ!また…?」

 

夫は、看護師さんに症状を説明しました。

「実は、また手術だと言われまして…。」

 

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看護師さんは、頷きながら夫の話を真剣に聞いて下さいました。

そして…

「いいと思う。」

「手術が嫌なら正直に言っても。」

 

想定外の言葉に吃驚しました。

(えーっ!)

(先生の言う通りにしなさい、って言ってくれると思ったのにー)

 

続きがありました。

「でも、理由を言わなければだめよ。」

「“なぜ” 手術をしたくないのか?」

「先生は、その理由を聞いて一緒に考えて下さる先生だから。」

 

銀婚式の日、涙を拭きながら「おめでとう」と言って下さった看護師さんです。

4-⑧病理検査の結果日=「銀婚式の日」
『手術が終わり、病理検査の結果日が来ました。…』

 

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そして、別れる時の「力強い言葉」。

「あとで後悔をしないように。」

 

夫は、悩んでいる様子で下を向いていました。

「・・・」

 

看護師さんは、真っ直ぐ夫を見て「きっぱり」。

「いい?」

「自分で決めたのだからね!」

「誰のせいでもないのよ!」

 

いつもは優しい笑顔の看護師さんです。

でも、この時はとても真剣で厳しい表情でした。

「もう手術をしたくない、という気持ちはわかる。」

「何度も何度もだから…そう思いたくもなる。」

 

「でも、あとで後悔をしない方を選ぶように!」

 

 

あまりの迫力に、私は声が出ませんでした。

夫は、黙って何度も頷いていました。

 

帰りは、二人とも会話をせずに静かでした。

各々考え事をしていました。

 

そして、夫は看護師さんの言葉に心が揺さぶられた様でした。

翌週、産業医に相談をします。