【看病:50代⑥】⑲検査結果の帰り「思いがけない院長の一言」

「PET検査」等の結果を聞いた日は、まだ手術方法が決定していませんでした。

 

 

診察室を出てからは、二人で下を向きながら歩いていました。

 

エスカレーターを降りて頭を上げた時…。

誰かに見られている気がしました。

 

キョロキョロしましたが誰もいません。

でも、じっと見られている気がしました。

 

今度は、遠くを見てみました。

私たちをじっと見ている人がいました。

 

院長でした。

 

―・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

二人で駆け寄りました。

「院長先生…。」

「院長先生…。」

 

院長は、黙って何度も頷きました。

 

夫が報告をしました。

「また手術をする事になりました…。」

 

院長は既にご存じでした。

「…うん、聞いた。」

 

夫は下を向き黙っています。

「・・・」

 

院長の表情は真剣でした。

「先生方が、考えてくれているから…。」

 

二人で黙って頷きました。

 

30代の時からお世話になっている大好きな院長です。

当時は外科医長でした。

大好きな院長の前で、夫は声にならない様でした。

 

1-⑫手術直後「家族の様に喜んで下さる外科医長(現院長)」
『手術が始まりました。…』

2-⑬30代手術時の病院に「手術、主治医のお願い」
『ちょうど同じ時刻、夫も転勤先の病院で医師から手術の説明を受けていました。…』

 

―・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

ここにずっといても院長を困らすだけだと思い、立ち去ろうとした時です。

 

院長が、思いがけない言葉を掛けて下さいました。

「僕も一生懸命考えるから…。」

 

院長は夫を見ています。

私も夫を見ました。

 

夫はずっと床を見ています。

(聞こえたかしら…?)

 

夫から御礼の言葉が聞こえません。

(どうしよう…)

 

院長は小さく何度も頷いていました。

 

そして、夫を見ながらまた…。

「僕も考えるから。」

「一生懸命考えるから。」

 

夫の代わりに頭を深く下げました。

涙で声が出ませんでした。

 

―・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

駐車場に行き、車に乗りました。

なかなか発車しません。

 

運転席の夫を見ました。

 

ハンドルに頭をつけていました。

ハンカチで涙を押さえていました。

 

(あっ…)

(院長の声は聞こえていた…)

(涙で話すことが出来なかったんだわ…)

 

 

この日が、2月の最終週。

翌週の3月上旬から7度目の入院になりました。